スイミングは子どもの運動神経の発達につながる。医学者が唱える発育・発達曲線に沿った考え方

子どもの習い事として常に人気のスイミング。

学研教育総合研究所が通年おこなっている「小学生の日常生活・学習に関する調査」によると、2023年10月に実施された調査でもスイミングは習い事ランキング第1位。過去の調査を少しさかのぼってみても、10年以上変わらず人気だというデータが出ています。

親御さんの気持ちとしては、「からだが強い子になってほしい」「親も習っていてよかったから」など、お子さんのことを考えてこその様々な理由があるでしょう。

そこで今回は「スイミングと子どもの運動神経の発達」に焦点をあて、アメリカの医学者であるスキャモンが唱えた「発育・発達曲線」を交えながら見ていくことにします。

「スイミングが良いとは聞くけどいったい何が良いの?」「既に習わせているけどこのまま続けた方がいいのかな?」とお悩みの親御さんへ。本記事でご紹介するエビデンスが、考え方のヒントになればうれしいです。
 

「スキャモンの発育・発達曲線」からわかること

スキャモンとは、アメリカの医学者・生物学者であるリチャード・E・スキャモンのこと。「発育・発達曲線」は1930年に提唱された研究ですが、子どもの一般的な発育傾向としていまもなお様々なシーンで活用されています。

出典を参考に、CODACHIでも図を作成してみました。

この「スキャモンの発達・発育曲線」によると、子どもは3〜6歳頃の「プレゴールデンエイジ」の間に、いわゆる運動能力に関わる「神経型」が約80%ほどまで一気に成長。その後6〜12歳頃の「ゴールデンエイジ」でほぼ100%形成されることがわかりますね。

すなわち運動能力は、身長や体重などを指すからだの発育「一般型」よりももっと早い段階で成人並みに発達しているということ。

「神経型」と「一般型」がシンクロして成人へと近づいていく。そんなイメージを持っていただけるとわかりやすいかと思います。
 

スイミングがもたらすメリット

ゴールデンエイジについてわかったところで、次にスイミングがもたらすメリットについて見ていきましょう。
 

非日常感が五感を刺激する

五感とは、味覚・聴覚・嗅覚・視覚・触覚、の5つの感覚のこと。五感から受けた刺激が電気信号となって神経細胞に送られ、その電気信号を別の神経細胞に伝えようとするときに「シナプス」ができます。

このシナプスとは、神経細胞同士が連絡する接続点のこと。シナプスが増えることで人は言葉を覚えたり複雑な動きができたりなど、人間らしく成長していくのです。

つまり、脳の発達にスイミングがおすすめと言われるのもこの「五感」と「シナプス」が深く関係しているということ。

水の中は水圧や水の抵抗力・浮力・水温など、陸上とは違う刺激を脳に与えてくれるうえ、リズミカルな動きもありますね。その刺激や動きが、シナプスの形成を促してくれると言われています。
 

情報処理能力が高まる

水中での運動は全身を使うため、からだ全体の協調性やバランス感覚を養います。この身体的な調整は脳にも良い刺激を与え、空間認識力や注意力を鍛える効果があることがわかっています。

スイミングをしている間からだは水の抵抗に対抗しながら進むため、微細な動きにも集中しなければならず、これが脳の情報処理能力を高めるのですね。

シナプスがたくさん形成されると情報処理能力も高くなる(頭の回転が速くなる)ため、東大生の60%以上が幼少期にスイミングを習っていた、という調査結果ともつながる気がしませんか?
 

脳がバランスよく活性化する

スイミングは左右の手足を交互に使うため、脳の両半球をバランスよく活性化させるとも言われています。

クロールや平泳ぎでは両手を交互に動かし、さらには脚も独立して動かすため、脳が複数の情報を同時に処理する必要がありますよね。これが認知機能の向上に役立っているのです。
 

スイミングのデメリット

ここまでお読みいただきスイミングのいろいろなメリットを知ると、どうしようかなと迷われていた親御さんもついつい前のめりになってしまいますよね。

ただし、なにごともメリットがあればデメリットもあるもの。デメリットと言うと少しおおげさに聞こえてしまうかもしれませんが、考えておかなければいけないこともあります。
 

着替えのサポート

息子は年少さん(早生まれなので3歳になってすぐの頃)に近くのスイミングスクールに通い始めましたが、まだ完全にひとりではお着替えができない年齢なので、テンションが高い息子を混み合う更衣室ですばやく着替えさせるというのが大変でした。

曜日や時間帯によってはキッズクラスだけではないため、ご年配の方と同じ空間で子どもを着替えさせなければならないことも。泳いでいないはずの私までどっと疲れていたことを思い出します・・
 

送迎の負担

また、お着替えだけではなく送迎も必要ですね。これはスイミングに限ったことではありませんが、子どもがひとりで通える年齢になるまでは待ち時間の工夫も必要です。

親戚が近くに住んでいれば協力し合うこともできますが、そうでない家庭は日中ママひとりで担うのは大変なことでしょう。
 

コストパフォーマンスの問題

その後、息子は幼稚園の課外サッカークラブに入部したためスイミングは1年半ほどで辞めてしまいました。

仕事をしているため時間的な問題で両立が厳しかったこともありますが、スイミングの月謝が大幅に値上がりしたことと、クラスの人数が増えたことでひとりひとりが水中にいられる時間がどうしても短くなってしまったこと。この2つが、スイミングを辞めた理由です。

辞めた当時まだ年中さんだった息子は辞めたいとも辞めたくないとも言いませんでしたが、親としてはスイミングのメリットを知った上で習わせていたので、できれば続けたかったなというのが本音です。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか。スイミングには、習い事ランキングNo.1という調査結果にも納得のメリットがたくさんありましたね。

上達のプロセスがわかりやすく子ども自身も達成感を得られやすいスイミング。親としてもぜひとも習わせたい習い事のひとつではありますが、エビデンスを知るとさらに魅力が増したのではないでしょうか。

本記事が、子どもの運動能力を高めたい!という親御さんのヒントになればうれしいです。

参考文献
・学研教育総合研究所(学研教育総研)「小学生の日常生活・学習に関する調査」7.習い事について,2023年
・藤井勝紀「発育発達とScammonの発育曲線」35:1~16,スポーツ健康科学研究,2013年
・CHILD RESEARCH NET「34. 脳細胞の基本的な仕組み」,2009年

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